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しゃよう

斜陽

太宰 治

「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页

青空文庫

その日は一日、モッコかつぎをして、帰りの電車の中で、涙が出て来て仕様が無かったが、その次の時には、ヨイトマケの綱引だった。そうして、私にはその仕事が一ばん面白かった。

二度、三度、山へ行くうちに、国民学校の男生徒たちが私の姿を、いやにじろじろ見るようになった。或る日、私がモッコかつぎをしていると、男生徒が二三人、私とすれちがって、それから、そのうちの一人が、

「あいつが、スパイか」

と小声で言ったのを聞き、私はびっくりしてしまった。

「なぜ、あんな事を言うのかしら」

と私は、私と並んでモッコをかついで歩いている若い娘さんにたずねた。

「外人みたいだから」

若い娘さんは、まじめに答えた。

「あなたも、あたしをスパイだと思っていらっしゃる?」

「いいえ」

こんどは少し笑って答えた。

「私、日本人ですわ」

と言って、その自分の言葉が、われながら馬鹿らしいナンセンスのように思われて、ひとりでくすくす笑った。

或るお天気のいい日に、私は朝から男の人たちと一緒に丸太はこびをしていると、監視当番の若い将校が顔をしかめて、私を指差し、

「おい、君。君は、こっちへ来給え」

と言って、さっさと松林のほうへ歩いて行き、私が不安と恐怖で胸をどきどきさせながら、その後について行くと、林の奥に製材所から来たばかりの板が積んであって、将校はその