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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
前まで行って立ちどまり、くるりと私のほうに向き直って、
「毎日、つらいでしょう。きょうは一つ、この材木の見張番をしていて下さい」
と白い歯を出して笑った。
「ここに、立っているのですか?」
「ここは、涼しくて静かだから、この板の上でお昼寝でもしていて下さい。もし、退屈だったら、これは、お読みかも知れないけど」
と言って、上衣のポケットから小さい文庫本を取り出し、てれたように、板の上にほうり、
「こんなものでも、読んでいて下さい」
文庫本には、「トロイカ」と記されていた。
私はその文庫本を取り上げ、
「ありがとうございます。うちにも、本のすきなのがいまして、いま、南方に行っていますけど」
と申し上げたら、聞き違いしたらしく、
「ああ、そう。あなたの御主人なのですね。南方じゃあ、たいへんだ」
と首を振ってしんみり言い、
「とにかく、きょうはここで見張番という事にして、あなたのお弁当は、あとで自分が持って来てあげますから、ゆっくり、休んでいらっしゃい」
と言い捨て、急ぎ足で帰って行かれた。
私は、材木に腰かけて、文庫本を読み、半分ほど読んだ頃、あの将校が、こつこつと靴の音をさせてやって来て、