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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
「どうじゃの、助殿。……お考えは?」
「さあて」
書面を巻き返し、主殿助の手へ返して、
「其許の御思案はな?」
「いちばん、ここは、思案のしどころと思うが」
「よしッ。拙者も、思案を見せよう」
いうやいな、助右衛門は、いきなり主殿助の喉首を攻めて、でんと、床の上に組み伏せた。
主殿助は、眼を剥いて、憤怒した。
「な、何をするっ。貴様のためを思って打ち明けたのに、その友情を、裏切るのか」
上の助右衛門は、組み伏せた手をゆるめなかった。
「主君を裏切り、城中の戦友を裏切ろうとした汝が、友情などとは、片腹いたい。汝をこそ、裏切り者とは申すのだ」
「くそうッ」
主殿助は、死にもの狂いに、足業を仕かけたが、助右衛門の声に駈け上がって来た兵たちが、忽ち、かれを高手小手に縛めた。
「その者は、角矢倉の柱に、くくり付けておけ」
助右衛門はすぐ、実弟の奥村加兵衛をよんで、千秋主殿助にかわって、東曲輪の指揮をとらし、そこの守兵を入れ替えさせた。
内に、こんな際どい危険もあったりしながらも、末森城の守りは、依然、堅かった。
城主助右衛門の毅然たる態度にもあるが、一面、かれの妻が、よく兵をねぎらい、領民をかばい、自己の一命や安危などは措いて、衆と共に、良人と共に、女の道の善美をこの中に描いていた力も大きい。