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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
二十日、倶利伽羅を越え、砥波山を踏み、八幡峰にのぼって、越中一円を鳥瞰し、
「かしこに誰々を。ここには、なにがしを」
と、掌を指すように、諸兵の部署を、さしずした。
床几にかけて、遠方此方の、かれには珍しそうな北越山脈の壮観や、裏日本の海の色など眺めながら、折々、左右の将と談笑している容子は、まことに、遊歴にでも来ているような姿に見える。
呉服山に、仮城を作らせ、かれは八月中を、そこに滞陣した。
季節の豪雨がつづいた。
諸所に、山くずれを生じ、また各地の河川が、氾濫したと伝えられた。――そういう一夜、呉服山のふもとにある織田信雄の陣所へ、
「そっと、お目通りしたい者がござるが……」
と、三人づれの旅僧が、番兵を通じて、謁を求めて来た。
名をたずねても、旅僧らは、お目通りすればすぐ分る者です――とばかりで名は明かさないのであった。
「決して、怪しい者ではおざらぬ」
と、旅僧の中の一人は、矢立を取り出して、小さい紙片に、何やら書いて、結んで渡した。
番士は、部将へ。部将はそれを、信雄へ取次いだ。
紙片には。
越前家中、佐々平左、同苗与左衛門、野々村主水。