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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

迎えに来た上杉家の若い武士は、ちょっと、遠くから一礼して、先駆に立った。

行くほどに――秀吉はその若侍のすがたを後ろから見て、

「よい男ぶりよ」

と、つぶやいた。

秀吉のそのことばで、誰もが同じ思いをしたのであるが、越後は、美女の産地と聞いていたのに、

「美男もおるわ」

と、みな見恍れた。――といっても、蒲柳で柔弱な型ではなく、四肢は伸びやかに、眉は濃く、頬は小麦色に、唇は丹のごとく、いかにも健康そうな、美丈夫、偉丈夫の風があった。

「秀俊。あれは、上杉家の何と申す者か」

秀吉は、馬上から馬上へたずねたが、秀俊は、思い出せなかったので、こう答えた。

「いや。……まだ姓名もろくに聞いておりません。上杉家も、ちと粗末です。何しろ、すぐ御案内にといって、あんな若いのを、ただ一人、お迎えによこすなどとは」

――やがて、糸魚川の町口が見えた。と、驚くべき秩序美をもった軍隊が、迎賓の礼を執って待っていた。町中、道々も、塵一つなかった。

――見れば、上杉景勝が、自身、そこまで、出迎えに出ていたのである。長尾権四郎、本庄越前、藤田信吉、安田順易など十二騎の家臣をしたがえ、路傍に下馬して秀吉を待った。