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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
宗易は、茶が終ると、姿をかくしたが、もう一名の妙な男だけは、秀吉のそばにいて、主客のはなしを、にやにや聞いていた。
晴季は、その男が、気になるので、つい肚のうちを、云い出しかねていると、秀吉はそれと察したか、笑いながらこういった。
「菊亭どの。これは堺のそろりと申し、毒にも薬にもならん男。お気づかいなく、お考えを、聞かせられい」
秀吉は、さきに腹蔵を打ちあけていた。足利義昭に養子を断られたことなども、不面目だからといって、隠し立てなどはしなかった。
晴季は、膝をすすめた。
「では、忌憚のないところを申しあげるがの。将軍職のお望みは、まず御断念がよいとおもう」
「見込みはないか」
「あっても、つまらんではございませんか」
「ふーむ、そうかな」
と、秀吉は小鼻に皺をよせて横を向いた。
うしろに坐っていたそろりが秀吉と眼を見あわせて、にやりと笑った。近頃、このそろりという猫背の老人は、秀吉の腰巾着といわれるほど、気に入りで、いつも彼のそばにいた。しかし、秀吉の虫の居どころによっては、時々、眼うるさくなる場合もあるし、今も急に、云い出した。
「新左衛門」
「はあ」
「おまえも、退がっておれ。