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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

数正の不為を意に介さないならば、事はかんたんだといえるが――極秘を前提として、四隣の耳目を憚ると、数正に会うことだけでも容易ではない。

表門を去り、横門へ廻った。

ここも、門扉はかたく、真っ暗で、ただその夜の木枯しばかりが、宵より強く、あたりの樹木をゆすっている。

城代屋敷は、非常の場合、小さい砦の代りぐらいにはなるように、小川を繞らし、吊り橋をわたし、すべて堅固な構えにできている。

かれは、さらに、裏門の方へ行こうとした。――と、そこに、さっき着いた四、五頭の駒がまだ暗闇の柳に繋いであった。そのほか、何か、忙しげに、小門を出入りする人影も見られた。伝右衛門は、しめたと思いながら、小走りに、近づきかけた。――すると、見張の者でも佇んでいたのか、

「待てッ。どこへ」

と、呼び止められた。

はっと、振り向いたとき、かれの眸に、槍を持って身を小具足にかためた兵の影が三人ほど映った。その姿といい語気といい、ただちに、戦時の殺気を思わせた。――が、伝右衛門は、努めて、ことばを穏やかにした。

「二の丸詰の物頭、初鹿野伝右衛門でござる。御城代に折入って、お会い申さねばならぬことが出来、夜ぶんを押して訪ねて参ったのじゃ。