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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

「怺えよ。我慢のしどころだぞ。ここ十日も頑張れば、先にやった密使もつき、必ずや、味方の援軍がやってくる」

一益や与十郎の、こういう鼓舞も、いまは実際感に欠けてきた。――だがなお――城兵を力づけるために、一益は甥の滝川長兵衛という剛胆者をよびつけ、

「関ノ城、峰城、神戸ノ城、伊勢路までゆけば、蒲生どのの軍勢もおり、お味方は充満しておる。先にも、急使をやってあるが、そちも、城外へまぎれて出て、早馬を雇い、一刻もはやく、味方の救いの着くように、急いでくれい」

と、いいふくめて、城から出した。

しかし、その夜も、明けまで、引っきりなしの攻撃に、かれ自身も、城兵も、いまは綿のように疲れぬいた。

糧食、弾薬は、日を趁って、欠乏しはじめ、二の丸の敵の浴びせてくる火箭はのべつ火災を起し、防戦につくす兵力の大半も、消火に努めねばならなくなった。

一益から密使の命をうけた甥の滝川長兵衛は、その夜、城内の下水道から這い出して、水門の堰をわたり、暗にまぎれて城の外へ駈け出した。

伊勢方面の味方へ聯絡をとるにしても、果たして、その急援が間にあうかどうか。――長兵衛は心もとない気もしたが、叔父の滝川一益は、かれの門出に、こういっていた。