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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
それくらいな人間の相違はある。
「さてさて、稀有なお心入れではある。中将(北畠信雄)どの。もう、あとは湯漬でも頂戴しよう。由来……貧乏そだちの家康とて、こよいの豪華な馳走には、ただただ舌も胃の腑もおどろくばかり。おもわずいこう喰べふくれておざる」
いうとおり、家康は、馳走攻めにあっていた。
十三日の――この清洲についた当夜である。
ひる、清洲につくとすぐ、城外の寺院で、信雄の迎えをうけ、ただちに密談に移って数刻。たそがれ、城内の客殿にくつろいでからの、もてなしだった。
かつて中原にむかっては、信長の変にすら、今日まで容易に動くことのなかった家康が、自分のために、いよいよ岡崎を出て、しかも多年、蓄積された徳川家の全力を賭して、自身、清洲まで馬をすすめて来たのである。信雄として、この人を、敬慕と感激の眼で仰がずにいられない。亡父はいい知己をのこしておいてくれた。そう思わずにいられない。この人こそほんとうの義を重んじ情誼にあつく、弱きをあわれみ強きに屈せぬ正義仁侠の武門というべきだろう。あらゆる歓待の労も、饗膳の美も、信雄は、精いッぱいを傾けた。
しかし家康の眼からみると、まことにみなこれ乳臭の児戯。