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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

10 第十分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页

青空文庫

秀吉はよろこんだが、さりとてまだ安心はしていなかった。

「御祐筆に、すぐこれへ参るようにとの仰せですぞ」

金森金五が、ひとり出て来て、番の小姓へいいつけた。

大村由己がすぐやって来た。

中では、秀吉のことばに従って、彼が筆をとり、長文な書状が書かれ始めていた。――丹羽長秀宛にである。

箇条箇条のうちの、重なるところをいってみれば。

一去る十一日、美濃守秀長へ下された御書面を拝見し、涙がこぼれ申した。

一五畿内の固めはもちろん、西国表まで、丈夫に申しかため申した。勢州表の戦況は、ここ坂本において、さしずいたし、甲賀、伊勢の間にも、城三ヵ所も、新たに築き、味方は毎日の勝報に士気いよいよふるい申しておる。

一美濃方面は、御存じの池田勝入、稲葉伊予、森武蔵など、慥乎と構えており、別条なく、江州永原に、孫七郎秀次、高山右近、中川秀政、そのほか一万四、五千もの人数を、陣取らせ申した。

一秀長をば守山に。於次(秀勝)をば草津に。長岡越中(細川忠興)をば勢多に陣取らせ申した。また、加藤作内、堀尾茂助をば、甲賀のまん中にすえおき、筒井は大和に、こちらの人数を副え、さしおき申した。