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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

10 第十分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页

青空文庫

と、なんのこだわりもなく、口輪をとって、秀吉のあとに従いた。

秀吉は、うなずいて、列を進め出した。たくさんな若い人材のなかには、石田佐吉のような、経理の才もあり、智謀にとむ者もいるが、多くは、一番槍、一番首などを虎視たんたんと望むもので、

(さすが、忠三郎の望みはちがう)

と、秀吉は、振り向いて、氏郷のすがたを見、氏郷は、秀吉のその眼を仰いで、ニコと笑った。

犬山へ着いた。

城内には、池田勝入父子が、出て迎えた。

秀吉以下、すべて、本丸その他へ、わかれて入った。

午すこし過ぎなので、すぐ中食。終ると、秀吉は、ごく少数の者と、茶をのみ、くつろぎながら、

「ときに、聟どのの、経過はどうじゃな、長可の容体は」

と、たずねた。

勝入と会ってはなすときは、秀吉は、いつでもすぐ、昔友達そのままになった。勝入が、まだ池田勝三郎のむかしから前田犬千代などと共によく清洲の町を、飲みあるいた悪友でもあり、以後、おたがいに、生死のなかも、離反せずに来た善友でもあるからである。

「いや、聟の血気には、ミソをつけ申したが、おもいのほか、恢復がはやく、一日もはやく、陣前に出て、汚名をそそぎたいと、それのみ、口ぐせに申しおりますわい」