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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

何処にいたのか黒の地に赤い斑点のある小蛇が蛙の後の方へ這いだして来た。半兵衛は眼をひかずにそれを見ていた。蛇は蛙の傍へ往くと鎌首をあげて、赤い針のような舌をちらちらと一二度出した後に蛙の隻足をくわえた。蛙は驚いて逃げようとしたがどうしても逃げることができないで、その体は次第に蛇の口の中へ消えて往った。

(けたいなこともあるものじゃ)

半兵衛は鬼魅がわるかった。その半兵衛の眼の前を灰毛の大きな体のものが掠めた。谷の下の方の林の中から一疋の大きな野猪が不意に出て来て、半兵衛の鼻端に触るように係蹄の傍へ往った。半兵衛は鉄砲をかまえた。野猪は蛙を呑んでむこうのほうへ這うて往こうとしている蛇を一口にぺろりと呑んでしまった。同時に半兵衛は火縄をさした。彼は小牛のような野猪が、轟然と響く鉄砲の音とともに、地響打って倒れるだろうと思ったが、鉄砲の音は小さく響いただけで、野猪は悠然とむこうの方へ往ってしまった。半兵衛は失敗ったと思って二発目の弾を急いで籠めたが、籠め終った時にはもう野猪の影も見えなかった。

(今日はけたいな日じゃな)

半兵衛は鉄砲を持ったなり考えだしたが、なんと思っても不思議でたまらない。