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ファルスについて

日本文化私観 坂口安吾エッセイ選

坂口 安吾

坂口安吾『日本文化私観 坂口安吾エッセイ選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:FARCE に就て、神童でなかったラムボオの詩、花田清輝論、スタンダアルの文体、大阪の反逆。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 页

青空文庫

錬れないので、喜劇ともつかずファルスともつかず、妙にグラグラして、彼の近作は概ね愚作である。

が、然し何も、このロジカルな方向がファルスの唯一の方向ではない。ファルスはファルスとして、ファルスなりに、性格的であり現実的であり得るのである。西洋の古代、並びに、特に日本の江戸時代は、ファルスはファルスなりに余程性格的であり、かつ現実的であった。『浮世風呂』、『浮世床』であるとか、西洋では、“Ma※(サーカムフレックスアクセント付きI小文字)tre Pathelin”(仏蘭西の十五世紀頃の作品)、なぞがそうである。私達のファルスは、この方面に尚充分に延びて行く可能性があるように考えられるし、又この逆に、概念的な、奇想天外な乱痴気騒ぎにしてからが、まだまだ古来東西にわたって甚だシミッタレなところがあった。なまじいに科学的な国柄だけに西洋の方に此の弊が強く、例えば、オスカア・ワイルドに「カンタビイルの幽霊」というものがあるが、日本の落語に之と全く同一の行き方をしたものがあって――題は忘れてしまったが、(隠居がお化けをコキ使う話)、私には、その落語の方が、はるかに羽目を外れて警抜であったために、ケタ違いの深い感銘を受けたことを覚えている。