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にほんばしふきん
日本橋附近
田山 花袋
「東京日日新聞」1927(昭和2)年4月19日〜5月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,383 字 · 37 页
『辻斬の町、泥棒の町、罪悪の町、妖怪の町だったんですね』
『去年に八十五で死んだ伯父の話では、それでもところどころに、今の三越のある少し手前ぐらいのところに二文ぐらいで食えるそば屋――それも屋台か、でなければ他の店の片隅でも借りたような小さな店があって、そこにかすかに灯がともっていたということだよ。よく芝居でやったり、講談で読んだりするじゃないか?』
『そうですね』
『大通りは、それでも提灯をつけたものや、駕籠に乗って例の提灯を飛ばして行くものが少しはあったそうだよ。遠くから見ると、その提灯がチラチラ動いて綺麗だったそうだよ』
『ところが、今ではそんなことを考えて見るのもないですからね……。昔からやっぱりこのように明るくって、にぎやかで、人通りが多かったと思っているんですからね……』
Nはこういったが少し考えて、
『外国でもやっぱりそうだが、この灯火の変遷ということは興味のあることですね。外国の小説にもランプをつけた時代のことが書いてありますが、日本でも、松明、結び灯台から燭台、行灯、ランプと変って行った形は面白いですね』
『そしてその度毎に世界が明るくなって行った筈なのだが、馴れてしまうと、そう大して有難くも思わなくなってしまうものだね。