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にほんばしふきん
日本橋附近
田山 花袋
「東京日日新聞」1927(昭和2)年4月19日〜5月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,383 字 · 37 页
八
不思議なものだね』
こういっている中に、話はいつか大通りの両側にずっと並んでつけられた石油灯のことに移って行った。成ほどその時分には昼間掃除夫が一つ一つ石油をついで行って夕方になると、長い金の棒の先に火のついたのを持った点火夫が小走りに走りながら、その両側のガラス灯の戸を巧みにあけたてしてそして一つ一つ火を点じて行くのだった。それは当時十一になったかならない幼い私の心を惹くに十分だった。私はその点火夫のあとについて一散に走った。
『見ている中に、一つ一つだんだんついて行く形が愉快なんだよ……。ああもうあんなところまで行った――こんなことを言って、じっとそれを見ていたものだよ』
『つまり闇の都会から、今日の明るい都会に到達する過渡期だったわけですね』こんなことをいってNは笑った。
八
十軒店があそこでひとつの巴渦を巻いているのは面白い。時の変遷につれて、あの魚河岸でさえ昔の面影をとどめなくなっているのに、ここにはいつまで経っても同じような特色ある小繁華を成している。敢て江戸時代がここに残っているとはいわない。また長い間の種々な影響を受けないことはない。私の知っている限りにおいても、ここも一時非常に衰えたことがあったようである。