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にほんばしふきん
日本橋附近
田山 花袋
「東京日日新聞」1927(昭和2)年4月19日〜5月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,383 字 · 37 页
草花が赤く黄くまたむらさきにあたりに綴られていた。(こういうところも好いな)私の胸にはまたしても私たちの若い時のことが繰返されて来るのだった。私たちの若い頃には、退屈したりつまらなくなったりすると、わざ/\遠く上野とか芝公園とかいうあたりまで出かけて行かなければならなかったものだが、今ではこういうものが市中にある。ちょっと電車に乗って来て、すぐこうした明るい光線に浸ることが出来る。またそこに来て、ベンチに腰でもかければ、ちょっとした退屈や不平ならまぎらせることが出来る。また通りがかりなどにちょっと入って見て、いろ/\なものを見て気を晴らすことが出来る。少くともこうしたものがここにあるということは、都会でなければ得られない一つのめぐみであるといって好かった。
約束してそこで落合うのにも好いだろうし、手軽な見合などするにも好いだろうし、また小説のひとつのシーンになるような場合も決してすくなくはないだろうなどと思って、あちこちと歩いた。私はこの時ふと三越の常務をしている浜田四郎君のことを思い出した。私は浜田君とは本町で一緒に机をならべていた。それは今から二十五、六年も前のことだった。