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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治劇談 ランプの下にて、明治演劇年表。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 页

青空文庫

それは二十六年の盆興行で、通し狂言が円朝物の「榛名梅香団扇画」で、ほかに中幕として大晏寺堤と水滸伝のだんまりが付いていた。この芝居に対して、小林君は中央新聞社蜃気楼主人として引幕を贈ったのであった。勿論、それには新聞社の広告の意味も含まれていたに相違ないが、ともかくも劇場に対して劇評家から引幕を贈ったのはこれが始めであるから、たとい金巾の幕にしても相当に観客の注意をひいた。しかし、この興行は団菊左顔あわせの大一座であったにもかかわらず、哀れさんざんの不入りであったから、この引幕を知っている人はあまり多くなかったかも知れない。

小林君は今から二十余年前に世を去ったが、その当時わたしと同じ桟敷で見物していた各新聞社の劇評家は大抵あとや先に凋落して、いわゆる蓮台座の見物人となってしまった。さきに物故した松居松翁君は二十七年の十月頃から『中央新聞』に入社して、わたしと一緒に芝居を観にゆくことになって、社の編集局でも机をならべていた。ある時、ふたりが編集局で午飯をくう時に、天金の天ぷらもいいが、一人前をひとりで食うのは分量が多過ぎて胃を害するというので、折りから来あわせた天金の出前持をつかまえて、天ぷらは一人前で、飯だけを二人前持ってくるかと談判すると、承知してやがて持って来たが、さて二人が食い始めると、やはり一