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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治劇談 ランプの下にて、明治演劇年表。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 页
そのほかに関口屋の下女おますというのを勤めて、女房の死霊がそれに乗りうつって主人の伴蔵を呪うところが凄く出来た。
それで張合いが出たのか、あるいはかれの技芸に一転機を劃したのか、その後の菊之助は興行ごとに評判がよくなった。翌二十六年の歌舞伎座三月興行に「黒手組助六」の牛若伝次をつとめた時などは、いつもの悪い調子ながら啖呵が切れて滅法いいという評判であった。こうして彼は前途有望の青年俳優にかぞえられて、和事師や女形を得意としていたが、それでもかの新蔵などとは正反対で、その舞台はいつも暗い寂しいような感じをあたえた。彼はこのごろ多病であるという噂も伝えられた。
菊之助が掉尾の一振ともいうべきものは、明治三十年二月の歌舞伎座で勤めた「関の扉」の小町姫であった。団十郎の関兵衛、菊五郎の墨染、染五郎の宗貞で、この浄瑠璃一幕が素晴らしい人気を呼んだのであるが、団十郎の関兵衛に対して菊之助の小町は殆んど遜色のない出来であるというので、好劇家は異口同音に賞讃した。団十郎も楽屋で褒めたそうである。かれは菊五郎の仕込みだけに、舞踊の素養も十分であった。しかも彼はそれから間もなく病床の人となって、その年の六月末に短かい生涯を終った。