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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治劇談 ランプの下にて、明治演劇年表。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 页
それに対して、歌舞伎座では福地桜痴居士作の「艦隊誉夜襲」を上演し、明治座では松居松葉君作の「敵国降伏」を上演した。前者はわが艦隊が露国軍艦レトウィーザンを撃沈した事実を脚色したもの、後者は鎌倉時代の蒙古襲来を脚色したもので、いずれも時局を当込みの産物であったが、わたしは前に言ったような事情で見物するの余暇を持たなかった。その他の小劇場でも競って戦争劇を上演していた。
そのあいだにおいて別種の注意をひいたのは、かの東京座の三月興行に坪内逍遥博士の「桐一葉」を上演した事と、歌舞伎座の四月興行に森鴎外博士の「日蓮聖人辻説法」を上演したことであった。前者は開戦前から上演の計画があったらしく、またその戯曲の内容から考えても、もちろん時局に関係のないのは判っている。後者は蒙古襲来が一種の背景をなしていて、日蓮が他国侵逼難を説くあたりは、やや時局を匂わしている感がないでもなく、劇場当事者もその意味から採用したらしいようであったが、いずれにしても戦争熱が熾烈の最中に、在来の狂言作者とは全然立場を異にした文学者の作物を思い切って上場したのは、世間の注意をひくに値したものである。