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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治劇談 ランプの下にて、明治演劇年表。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 页
こういうわけで、わたしは子供の時から「権八小紫」や、「おかる勘平」や、「関の扉」や、「靫猿」を知っていた。
茶番や踊りのお浚いはこうしてたびたび見せられたが、わたしが本当に芝居というものを見物したのは、明治十二年の三月、わたしが八歳の春であった。その前に観た大岡政談は全然記憶していないのであるから、わたしとしては実にこれが初めと言ってよい。
この芝居を初めて見物する前に、わたしは初めて彼の守田勘弥――新富座の座主で、先代の勘弥の父――という人に逢った。この前年の六月、新富座新築の開場式に在京の各外国人を招待したので、その時同じく招待をうけた英国公使館の外国人らが主唱者となって、外国人から何か新富座へ贈り物をするということになった。わたしの父は英国公使館に勤めていて、かつは団十郎ともかねて識っている関係から、一応それを新富座に交渉すると、座主の守田は非常によろこんで、記念のためにどうか引幕を頂戴することは出来まいかと言った。そこでいよいよその引幕――わたしはその下絵も実物も見たが、それは紫の絹地のまん中に松竹梅の円を繍って、そのなかに新富座の定紋のかたばみを色糸で繍い出したものであった――を贈ることになって、翌年の三月興行から新富座の舞台にかけられた。