轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

10 その九 覆面屋敷

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,820 字 · 54 页

青空文庫

しかし、ここに納得できない一事があった。一枝の呪文に身が凍るのは、そのためなのだ。

文彦が生れてまもなく、光子は父母から言い渡されたことがあった。文彦をわが弟と思ってはいかぬと云うのである。すべて長男は家をつぐものであり、女は他家へ嫁ぐ身であるから、姉といえども長男を弟と見てはならぬ。その名を呼ぶにも文彦様と敬称しなければならぬと云うのであった。子供の時からそう躾けられて育ったから、光子は弟を文彦様とあがめてそれが不自然だとは思わぬように習慣づけられているが、他人の目からは変テコであるに相違ない。もっとも、東京の学校へ入学してから分ったが、家によっては同じような習慣のところも少くないようだ。女の子は哀れなものだ。

ところが、実の父母たる土彦も、糸路もわが子を文彦様とよぶのである。同じ分家の家柄たる水彦のところでは木々彦が長子で上がないから、姉の場合は分らないが、父の水彦がわが子を木々彦様と呼びはしない。してみれば、多久家の分家に長男を様づけにするという定まった家法があるわけではないのだろう。万事洋風をまねたがるハイカラ時代ではあったが、水彦様が特にハイカラをとりいれている様子もほかに見当らないから、父母がわが子を文彦様とあがめるのは、なんとなく異様である。