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しゅんせつのでわじのみっか
春雪の出羽路の三日
喜田 貞吉
「社会史研究 第九巻第六号」1923(大正12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,521 字 · 33 页
そうでなくてもこの冬のような大雪では、低い家では軒まで達することが珍らしくない。そこでかかる地方では雪が四壁に逼まるのを防ぐために、家の周囲に「雪がこい」ということをする。雪国の家は普通三方を壁で囲うて、出入口を一方に設け、他は小窓があるくらいに過ぎないから、通例壁に副うて木材を立て、それに葦簀や薦の類を縛りつけてそれで取り囲むのであるが、江畑君のお宅のような都会風の座敷廻りなどでは、前もって板で作った蔀風のものを設備して、それを外側に立ててあった。しかしいずれも壁が直接雪に冒されないための防禦なのだ。『和名抄』に、
縛壁 釈名云、縛壁ハ以レ席 縛著二於壁一也、漢語抄云、防壁(多都古毛)
とある。そしてそれを屏障具の中に列挙してあるのである。このことは『民族と歴史』第六巻第五号に、乞食を「お薦」ということを論じた文中に、簡単に及んでおいたことであったが、今この雪国で薦の類を家の周囲に副え立てて、壁を防ぐの設備をしているのを見て、縛壁は席をもって壁に著くる物だといい、防壁と書いてタツコモと訓ませた理由を、なるほどと覚えたことであった。もっともこれは雪国において、積雪の期間のみの設備であるが、昔の不完全な家屋では、普通の場合風雨の侵蝕に対しても、また同様に薦を立てて防壁の設備を施したものであったと考える。