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しゅんせつのでわじのみっか

春雪の出羽路の三日

喜田 貞吉

「社会史研究 第九巻第六号」1923(大正12)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,521 字 · 33 页

青空文庫

羽黒の裸祭

まずこんなようなものだ。合の手のコバエテとは「来れは良い」の義で、酒田地方の方言だという。同じ庄内でも鶴岡ではこれをコバイチャというそうな。

羽黒の裸祭

晩餐の席上で、同席の諸君からいろいろ有益なお話を承った中に、一つ羽黒の裸祭のことをここに書き留めておく。一月三十一日のころ年越の晩に行われるので、村民真冬の雪の深い中を、二組に分れて、丸裸でおしあって、恙虫を送るのだという。藁で大きな恙虫の形を作り、それを切り取って振り蒔く。それを血気の若者が争って取り合う。ある一定の地域より外へ持ち出せば、もはやその所得が認められたので争わない。それを持って帰って家の入口に置く。その残りを一定の地で焼く。その早く焼き終った方が勝ちとなるのだという。そのおしあい祭の両方の長たるものをヒジリというのが面白い。ヒジリは「聖」で、普通には念仏行者の称であるが、ここではその聖が首領となって、恙虫送りの行事をするのだ。そのヒジリなるものは百日間家を出て、羽黒山に参籠して潔斎するのだという。この祭の時は大そうな人出なので、積雪を穿って室を作り、そこで茶店を開いて参詣者に茶菓、酒食を供するという。