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しゅんせつのでわじのみっか

春雪の出羽路の三日

喜田 貞吉

「社会史研究 第九巻第六号」1923(大正12)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,521 字 · 33 页

青空文庫

箱雪車とモンペ

と。なるほどそれに違いない。人力はよくだんだんと天然に打ち勝って行くとはいえ、今のところではまだ、全然これを征服するとまでには行かないのだ。どうで昔はこんな交通機関などはなかったのだもの、たまに大雪で汽車が不通になったならば、大井川の河止めに遭ったくらいに覚悟して貰えばよいのかも知れぬ。しかし今のいわゆる目覚めた人間には、なかなかそれでは承知が出来ないのだ。とても相撲にならんと、頭から考えてもみなかった労働者らが、結束して資本主に喰ってかかる世の中だもの。

箱雪車とモンペ

十二時少し前に後三年駅で下車すると、改札口に深沢君が待っておられる。当年の郡長様も郷里では鳥打帽にモンペという出で立ちだ。モンペとは袴とズボンとの合の子で、雪国にはなくてはならぬもの。地方によって多少作り方も違い、タチツケ、あるいは略してタッケ、猿袴、踏ん込みなどともいい、庄内辺ではマタシャリとも言うそうな。昔は一般に猟師・山人などの着用したものだが、今でも雪国には広く行われている服装なのだ。

深沢君に伴われて、駅前のある会社の事務所で少憩、金沢八幡社の祠官三浦憲郎君とともに、飯詰村中島の江畑新之助君の邸に案内せられて、この夜は同家で一同御厄介になる。