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しょうわよねんのぶんだんのがいかん

昭和四年の文壇の概観

平林 初之輔

「新潮 第二六年第一二号」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,557 字 · 29 页

青空文庫

プロレタリア文学の内容主義と功利主義とに対する反発である。小林秀雄が、『改造』の懸賞に応じた評論は、この派の代表的理論であろう。そこには主張も理論もすべて否定されている。横光利一の騒音の賛美もそれと軌を一にする。――ここにマルキシズム文学の明快を貴ぶ文学論と、芸術派の不明快を貴ぶ文学論の衝突が起こってくる――と横光利一はあるところで言う。

この言葉は実に興味のある言葉である。文学派はこれで見ると明確にマルキシズム文学のアンチテーゼとしての自己をまだつくり上げないで、それを摸索しているのだ。その期間だけ、不明快と、騒音とで満足できているのだ。『文学』という彼らのオルガン〔機関誌〕の題名について、はじめ『左翼』とするつもりであったのが、『文学』となったのであるが、実によい名前だと川端康成は言う。この言葉の意味もよくわかる。何も冠詞のない文学は、何の主張もない文学という意味だ。だが無意識的には反マルクス主義派であれば、どんな分子でも、騒音の中の一つの音としてとり入れられる。ダグラスの信用経済と新文学とを有機的にむすびつけようとする久野豊彦の不協和音にも一つの席が与えられる。