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ひるのはなび
昼の花火
山川 方夫
「三田文学 第四七三巻第一号」三田文学会、1953(昭和28)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,030 字 · 15 页
「みんな、元気ね」
間の抜けたことをいう。彼は思った。
グラウンドに、白い線が飛び交っている。その速い白球の線で結びあって、声をかけ激励しあう若々しいナインを、だが、彼は強烈な光のように感じていた。目を細め、眉をしかめるようにして、それを見ていた。
青年の、その健やかな若さが、急に眩しかった。全身での運動に、彼は渇いていた。
「絶好の野球日和、か」
ごまかすようにいって、みんな、元気ねと女の言葉を口の中で真似した。
「ねえ」
そのとき、女が囁くようにいった。
「……あなた、何故もっと私に甘えてみなかったの」
肩がさわっていた。円いその肩に吊られたスリップの細い紐が、白い絹ブラウスに透けて見える。――盛夏だ。感じて、彼は目をそらした。
香水と汗の匂いとが混りあって、女の体臭がなまなましく彼を包んでくる。が、反射的にそれから身をはなそうとする自分が、いまはひどく憤ろしいのだ。
背を反らした姿勢の、あの子供っぽい快さを、僕は、いつまでも後生大切にかかえこんで行くつもりだろう。
カーン。
そのとき、白球が三遊間を抜いた。ヒットだ。
打者は一塁を廻り、帽子を飛ばして二塁へと突進する。