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ばんしゅう

晩秋

山本 周五郎

「講談倶楽部」博文館、1945(昭和20)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,792 字 · 23 页

青空文庫

「岡崎へ御就封このかた、御政治むきでは非常の手段を多く必要とした」主計はそのように語を継いだ、「……なによりも藩の基礎を確立することがさきだった、家中の者にも、諸民にも、ずいぶん無理な、時には過酷だと思う政治をさえ執った、それは必要だったのだ、藩礎が固まるまでは、どうしてもそういう時期を通過しなくてはならなかったのだ。……自分は冷酷な情を知らぬ人間だと云われた、専制、暴戻と罵られたが、おかげで却って仕事はしよかった、そういう名が付けば付くだけ無理が押せるし、責任を他の者に分担させる必要がなかったから、……だがもはや岡崎藩の基礎は確立した、領民にも耐え忍んで貰ったものを返す時が来た、新しい政治が始まるのだ、そしてそれは進藤主計の秕政を余すところなく剔抉することから始まるのだ」

「お言葉ではございますが」と主馬が声をはげまして云った、「……藩礎確立のためにどうしても無くてはならなかった御政治でしたら、それを秕政として罰する法はないと思います」

「ばかなことを申すな」主計の声がにわかに烈しい力を帯びた、「この場合、藩礎確立ということは一つの理由だ、極端に云えば申し訳にすぎない、それがいかにぬきさしならぬものだったにせよ、理由に依っておこなわれた政治の過誤がゆるされる道理はないのだ」