轻松读懂日语经典作品
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ばんしゅう
晩秋
山本 周五郎
「講談倶楽部」博文館、1945(昭和20)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,792 字 · 23 页
六
――父上さまお聞きになりましたか。都留はふところの懐剣をとり出しながら、心のなかでそう呟いた、――今こそ父上さまも御成仏あそばしましょう、そして今日まで都留の心の弱かったことを、父上さまのおみちびきだったと存じてもよろしいでしょうか……。
六
客たちは明ける前に帰った。朝になってみると、奥の間はすっかり片付いていた。百余日のあいだ書き続けていた調書も、夥しい資料の山もなく、机は明り窓の下に押付けてあった。
朝食のあとで、主計は広縁へ出て足袋の穴をかがった。少し乱れているなかば灰色の髪、やつれの眼だつ横顔、そして骨ばった肩背をまるくして、つくねんと古足袋をかがっている姿は、平凡無事に老いた市井の一老爺としかみえない。――だが灰色になったあの髪の一筋ひとすじは、世間の怨嗟と誹謗を浴びながら、たゆまず屈せず闘ってきた証しなのだ。都留は廊下のこちらから主計の姿を見やりながらそう思った。――肩背をまるくしたみすぼらしいあの躯のなかには、暴戻、奸譎と貶られることを怖れず、まったく名利を棄てて生きた大きな真実があるのだ。……自分の父の死にかたを忘れることのできない都留には、それだけ深く、主計の生きかたの厳しさがわかるように思えた。