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ばんしゅう
晩秋
山本 周五郎
「講談倶楽部」博文館、1945(昭和20)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,792 字 · 23 页
二
二
考えたとおり都留の部屋はその八帖にきまった。中村の家から運ばれて来た自分の道具の他に、点茶のための土風炉や釜や箪笥などが持ち込まれたり、活花や香の用意までが揃えられて、黴臭いがらんとした部屋が、やがて女の居間らしい体裁をととのえていった。……その部屋の次ぎに小さな控えの間があり、その向うが十帖敷ほどの書院造りの室になっている、そこが預けられて来る人の居間だった。北側に明り窓があり、西に書院窓が造ってあった、南は広縁で、障子を開ければ居ながらにして庭の櫟林と、その樹間越しに六所山のあたりまで眺めることができた、――御不審のかかったお預け人でも御老臣ならこういう部屋に住むことができる、都留はその部屋を見たときふとそう思った、――それに較べて亡き父上はなんとご不幸なことだったろう、……そして絞られるように胸の痛むのを覚えた。
数日して屋敷内の用意が出来た。すでに八月も中旬となった或る日、朝から降りだした雨が昏れてからもやまず、夜に入ると風さえ加わって、肌寒い、しみいるような音を立てては頻りに廂を打つのが聞えた、その雨のなかを、それもかなり更けてから、人眼を忍ぶように進藤主計の乗物がこの屋敷へ到着した。