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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页

青空文庫

伯父さんのおっしゃる通りです。蜘蛛は二三度行ったり来たりして、はじめの糸を丈夫にしておいてから、その糸を足場にして、少し下の方に、第二の橋をわたしました。それから、二本の橋の間に、ななめの糸を幾本もはって、外がこいをつくってしまいますと、そのまん中に、あのからかさをひらいたような、美しい網をあみはじめるのです。

その網が半分ほどもできあがるまでには、一時間以上もかかりましたが、一太郎君は、その間、身動きもしないで、この小虫のすばらしい仕事ぶりに見とれていました。あきるどころか、見ていればいるほど、感心の度がふかくなって、おしまいには、それが蜘蛛ではなくて、人間の美しい曲芸師のようにさえ感じられてくるのでした。

晴れわたった青々とした空を背にして、銀色に光る細糸の上で、びっくりするような空中曲芸をえんじている曲芸師――女郎蜘蛛は、だんだらぞめの衣裳を着て、その衣裳にはきらきらとかがやく金銀のかざりさえついているのです。まあなんという美しさでしょう。

「ハハハ……、すっかり感心しているね。どうだね、こいつはなかなかえらい虫だろう。お前は、こんな小さな虫に、これほどの力をおさずけになった神様を、すばらしいとは思わないかね」