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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页

青空文庫

生みつけられた卵は、壺の中で殻をやぶって幼虫になり、たっぷり用意されている青虫をたべて、だんだん大きくなって行き、おしまいには親蜂と同じ成虫の姿になって、壺をやぶって、広い世界に飛び出すという順序だ。

人間のお母さんたちは、だいたり、おぶったり、お乳をのませたり、赤ちゃんを育てるのに、それはそれは御苦労をなさるのだが、トックリバチは、その苦労を、子供を生む前にすませてしまうのだね。

雨や風にあたらないよう、太陽の強い光に照らされないように、ちゃんと、安全なお家をつくっておいてやる。それから、お乳をのませる代りには、青虫をどっさりためておいて、子供が成長してしまうまで、少しもひもじい思いをしないように、何から何まで用意がしてあるのだ。その用意をするのが、母蜂の生涯での一番大きな仕事なんだよ。

十何匹の青虫は、赤ん坊が成長するまでの食料だから、途中で腐ったりしてはたいへんだ。いつでもいきいきしていなければならない。

そこで、トックリバチは、青虫の神経を刺して、からだをしびれさせておくだけでけっして殺しはしないのだよ。殺せばすぐに腐ってしまう。人間のお医者さまだって、こんなうまい注射はできやしない。