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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页

青空文庫

だから、冬よりも夏の方が、音は早くきこえるというわけだね。早いとかおそいとか言っても、耳では感じられないくらいのちがいだがね」

「へえ、温度でちがうんですか」

「うん、温度ばかりじゃない。音は伝わるものによって、みんな早さがちがうのだよ。音は気体でも液体でも固体でも伝わる。気体というのは空気のようなものだね。液体というのは水のような流れるもの、固体というのは、木とか金とか、そのほかしっかりした形のあるものだね。

そこで、今思いついたんだが、一つ音の伝わる早さの実験をやってみようか」

「え、実験ですって? お家へ帰ってですか」

「いや、ここでやるんだよ」

「だって、ここには何も道具がないじゃありませんか」

「ないことはない。ほら、そこに立派な道具があるじゃないか」

伯父さんはそういって、横の土手の上を指さしました。しかし、一太郎君にはまだわかりません。へんな顔をして、きょろきょろそのへんを見まわしています。

「ははは……わからないかい。ほら、それだよ。むこうがわの土手の上のレールだよ」

「へえ、レールが実験の道具なんですか」

一太郎君はびっくりしてしまいました。そこには線路の土手が二重にならんでいて、むこうがわの線路は、新しくできた郊外電車のレールなのですが、まだ工事がすんだばかりで、電車は通っていないのです。