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きりゅうつうしん

桐生通信

坂口 安吾

「読売新聞 第二七七五五号~第二八〇二五号」1954(昭和29)年3月11日~12月6日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,394 字 · 33 页

青空文庫

それを生きぬく力が女性的なのだ。男はヤケ酒をのんだり自殺したりするが、女は平然と生きぬく力がある。その女の力が男の力よりも勝っているのが桐生である。その女の力に反逆してメカケをかこったり女をひっぱたいたりして男らしくふるまうけれども、この一番という男の力、最後の筋金が足りない町という感が深い。

ヘプバーンと自転車

桐生市には自転車が多い。通りがせまいから、それが一そう目だつ。ある時間には歩行者よりも自転車の通行人が多いような感じである。この市における人口と自転車の比率なぞをふと考えてみる気持になるほど自転車が多いのである。

パチンコ屋の前にズラリと並んだ自転車。東京では見ることのできない壮観だ。ハイカラなレストランができた。そのとき町の若者の一人が私にこうつぶやいた。

「自転車を横づけにしてはいるのにグアイがわるいから、はやらないだろうな」

映画館には必ず自転車の駐車場がある。その自転車の数を見ると、今日はどれぐらいの入りかということが切符を買う前にわかるから、自転車が多すぎる時は敬して遠ざかり、よそへ行くことができる。この自転車数と館内の人員数との比率は一定していて、狂ったことがなかったのである。