轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
「文章世界」1913(大正2)年1~2月、1914(大正3)年5月~1918(大正7)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,569 字 · 222 页
言いあらわし難い恐怖をさえ感じて来た。浮いた心からとも自分ながら思われなかった。
例の牛込見付から市ヶ谷の方へ土手の上の長い小径を通って麹町の学校まで歩いて行って見ると、寄宿舎から講堂の方へ通う廊下のところで、ノオト・ブックを手にした二三の生徒の行過ぎるのが眼についた。その一人は勝子と同姓だった。何処か容貌にも似通ったところがあった。勝子に見られない紅い林檎のような頬がその人にあって、どうかするとその頬から受ける感じは粗野に近いほどのものであったが、それだけ地方から出て来た生地のままの特色を多分に有っていた。その生徒と勝子とは縁つづきででもあるのか、それとも地方によくある同姓の家族からでも来ているのか、と捨吉は想像した。勝子に縁故のあることは、どんなことでも捨吉の注意を引かずにはいなかった。
黙って秘密を胸の底に隠そうとし、誰にもそれを見あらわされまいとし、仮令幾晩となく眠られない夜が続きに続いて彼の小さな魂を揺するようにしても、頑な捨吉は独りで耐えられるだけ耐えようとした。その心で、彼は自分の教場へも出て行った。上の組の生徒の中でも、殊に磯子が彼の注意を引いた。