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つちのなかからのはなし
桜の森の満開の下
坂口安吾『桜の森の満開の下』。同一底本的分册已合并为一书。收入:土の中からの話、家康、閑山、禅僧、小さな部屋、道鏡。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,558 字 · 153 页
結尾坊主はホーゼを渡したかどうか? そのことは村人も各※(二の字点、1-2-22)の想像を働かすだけで区々である。
然しこういう話もあるのだ。
ある年の暮れ村の青年が景気よく忘年会をやった。尤も雪の降る季節になると、若者と若い女は大概都会へその季節だけ出稼ぎに行く。然しお綱は残っていた。忘年会の会場は小学校の裁縫室、青年会と処女会の合流で、宴たけなわとなり余興がはじまった。
舞台ではにわかじみた芝居が行われ、お綱がこれに登場して妻君の役をやっている。芝居が一向につまらなくて皆々だれ気味になってしまうと、一人の若者がいたずらを考えついた。手拭を三宝にのせ、これに「よだれふき」と麗々しくしたためた奴を敬々しく禅僧の前へ運んでいったものである。舞台ではお綱が人の妻君になってせいぜい甘ったれている芝居だから、さだめしよだれも流れましょうというあくどい洒落であった。
山奥の若者のことで、咄嗟に洒落ものみこめない。てんでんばらばらに漸くああそうかと分って、あっちでクスリ、こっちでクスリ、一度にどっとはこなかった。そこであくどい男がもう一人、今度は洗面器を持ってきて、禅僧の膝の前へ置いたものだ、そうして人々はどっと一時に笑いころげた。