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ふくろうのめ

梟の眼

大倉 燁子

「キング 一三巻三号」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,354 字 · 23 页

青空文庫

人違いだろう、うっかりスリだなんて云うと大変だぞ」

「でも――、昨日は失礼と云いましたよ。確かに間違いではありませんわ」

「もしか、それがほんとうだとしたら、――痛快だな。――どんな女だか、僕はもう一度見てくる」と云って、止めるのもきかないで、また入口の方へ後戻りしてしまった。

陽子は呆れて、兄の後姿を見送っていたが、軈て自分達のグループの方へ行った。

春樹のシイクな風采とスマートな社交振りとは西洋人の気に入り、殊に若い女達の間には大もてだった。忽ち番組のカードは予約で一杯になった。

噎せかえるような強い香水、甘たるい皮膚の香、柔らかそうな首筋、クリーム色のふっくりした胸、それ等は彼に何の刺戟も与えなかったが、ダイヤの魅力には時々自制の念を失うような、恐しい誘惑を感じた、春樹は宝石に眼を反らせて、ホールの中を踊り歩いているうちに、幾度も浮墨色の女と廻り合った。最初は黙礼を、次ぎには微笑を、終いには眼で合図するほど親しくなった。その眼がまたよく物を云う。偶然にバッタリ瞳が合う時など、春樹は身内がすくむような気持がした。日本人だろうか、西洋人だろうか、あるいは雑種児かも知れないが、いずれにしても不思議な魅力を持つ眼である。