轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
もりのくらきよる
森の暗き夜
小川 未明
「新潮」1910(明治43)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,725 字 · 18 页
物を言い得ない子供は、ただ泣いて饑を訴えたのである。空しき努力であった。泣けば泣くほど饑を感じた。そして、声もいつしか洞れてしまう。大きな頭が、その胴と釣合の取れぬ病的な重さのために、ぐたりと垂れて、柔らかな、弱々しい眼が瞬きもせずにぼんやりと開いている。子供は、たまたま、こんなに泣いて泣いて泣き疲れた揚句に、棚の上に乗っている白い土器を見た。そして、微かな笑いを立てた。
子供は、しっかりと女の背に負わされていながら、手を伸ばして土器を取ろうとした。ある時、女は、児の差し出した手を邪魔だといって叩いた。
遂に子供は、棚にあった土器を持たずに死んだ。生れてから一年と経たぬ間にこの世を去ってしまった。
女がこの死児を森に葬った日は、風があった。湿気を含んだ空気は、沈鬱に四辺を落着かせた。高く秀でた木の枝が、風に撓んで、伏しては、また起き上り、また打ち伏していた。他の低い木の枝は、右に泳ぎ、左に返っていた。雲は、白く、幾重にも重なっていた。
高い木のなびく、頂きには、青い空が綻びている。かの夕陽に赤く色づき、朝日に照り返って輝く、皮の剥げた枯木の老幹は、白くなって、青々と繁った林の中から突き出て見えた。