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もりのくらきよる

森の暗き夜

小川 未明

「新潮」1910(明治43)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,725 字 · 18 页

青空文庫

女は、何の木とも知らぬ、白い花の咲いている木の下に穴を掘った。そこには黒い布に包まれた死児が草の上に横たえられた。女は、掘りかけて鍬をそこに捨てて休んだ。湿っぽい風は女の油気のない、赤茶けた髪をなぶって吹いた。木々の葉は、冷笑うように鳴っていた。

女は、頬の肉が落ち、唇は堅く黒く凋んでしまった。掘り返された土が濡れていた。穴には、日の光りすら覗かない。この湿った土の中に、この児は埋められてしまう。そして、湿った土は、遂に日の光りに晒されずに再び旧の如く隠されてしまう。死んだ児は、地を透して日の光りを見ることがない。湿気に埋まって自ずと腐って行くのだ。掘り返された時、青葉にかかった土は、ばらばらと葉をすべり落ちて、穴の中に帰った。

餓えた時に乳を求めた児である。それをやらずに叱った女である。白い土器が欲しいと笑って手を出した児である。その手を叩いた女である。児は、長えに眠ってしまった。再び泣きはしない。このまま静かに地の中に入って眠るのだ。女は、木の葉の動くのを見て別に涙も出さなかった。女は、鍬を採った。力を入れて三尺ばかり掘って、穴の中に黒い布で包んだ子供を入れた。