轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 页

青空文庫

「実地を検分してもらいたいのです」

「私にですか」

「船岡は帰国されるのでしょう」

「来春は番あけになる筈です」

「番があければ帰国されるでしょう」

甲斐は「さて」といってはじめて、構えていた弓をおろし、にいる大助を招いた。堀内大助は惣左衛門の二男で、今年十四歳になり、三年まえから甲斐の側に勤めていた。甲斐は、走って来た大助に弓を渡し、ぬいでいた片肌へ袖をとおしながら、番はあけるが、いろいろ多用なので、いつ帰国できるかということはわからない、と云った。

「しかしそう延びることはないでしょう、少なくとも夏までには、帰国されるのではありませんか」

「そうあれば、いいのですが」

「そのときぜひ実地を見てもらいたいのです、ほかの者では涌谷に云い負かされてしまう、ほかの者ではだめです、ぜひ船岡にいって検分してもらいたいんです」

甲斐の額に深い皺がより、唇にあるかなきかの微笑がうかんだ。

「私も、涌谷さまは苦手です」

甲斐がそう云ったとき、矢崎舎人が的場へはいって来た。甲斐は式部に会釈して、そちらへゆき、舎人は「伊東新左衛門が危篤である」と告げた。

甲斐は眼をそむけた。

「云い遺したいことがあるとのことで、すぐおいでが願いたい、という使者の口上でございました」