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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
03 第三部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 页
「われわれ四人と会って、じかに話したいといって、おれといっしょに来たんだ」
「二人が来ているって」
「夕食をしながら話そうというので、いっしょに来て表てで待っているんだ」
島田と砂山は野中を見た。
――どうするか。
という眼つきである。かれらは野中を信頼していた。腕も一段すぐれているが、野中の誠実さに心から信頼し、これまでもずっと、野中の意見にしたがって行動して来た。それで、いまもまず野中の意向を聞きたがったのであろう。又五郎は手で蚊を追いながら、行燈の火のはためくのを見ていた。
「私は柿崎さんのようすを見て来た」と又五郎は静かに云った、「だが、どうやら見込みちがいだったようだ、柿崎さんは、私の申入れたことを一つも実行してくれない、相変らず女を側に置き、道場のことは見向きもせず、酒浸りになるか、そうでなければ出歩くばかりだ」
「すると、野中の意見は」
「二人に会ってみよう」と又五郎が云ったとき、廊下のかなたで高い叫び声がし、暴あらしい足音と、「誰か来て下さい」という、おみやの声が聞えた。
四人は立って、廊下へ出た。
廊下では、柿崎六郎兵衛と宮本新八と、そしておみやの三人が揉みあっていた。