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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
そして、中学校の門をくぐってからも、先生は、誰とも口をきかないで、校庭のポプラの幹に腕組をしてよりかかっていたが、合図の鐘が鳴る五六分前になると、急に何か思い出したように、みんなのかたまっているところに来て、いきなり次郎の頭をゆさぶりながら、言った。
「あせるな、いいか。今日は試験場で居ねむりをするつもりでやって来い。……先生の友達にね、よく試験の時に居ねむりをしていた人があるが、その人はいまは大学の先生になっている。」
みんなが笑った。次郎も淋しく笑って頭をかいた。すると、源次がはたから口を出した。
「その人、落第したことないんですか。」
「む、落第したこともあるが、大ていは及第した。」
みんながまた笑った。今度は竜一が、
「そんな人、先生、ほんとうにいるんですか。」
「ほんとうだとも、その人は非常な勉強家でね、よく本を読んで夜更かしをしていたんだ。しかし、それは試験のためではなかった。試験なんかどうでもいいっていう気でいたんだから、眠くなりゃあ、試験の最中でも眠ったのさ。」
「でも、その人、落第したのは、居ねむりをしたためじゃありません?」
他の一人の児童がたずねた。