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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
彼は、くやしいというよりも、何か気ぬけがしたようなふうだった。
彼にとって何よりもつらかったのは、正木に帰って不成績を報告することだった。で、万一に望みをかけて、及第の発表をまって帰ろうかとも考えた。しかし、いよいよ受からなかった場合のことを考えると、本田に残っている気にはなおさらなれなかったので、合宿の連中といっしょに、ともかくも正木に帰る決心をし、源次と竜一とにもそのことを約束していたのだった。
ところが、試験場からの帰りに、権田原先生は、例の無表情なような、奥深いような眼をして言った。
「本田は、もう三四日こちらに残るんだそうだね。ひょっとすると、成績発表の日まで残ることになるかも知れんが、失敗していても、平気で学校に帰って来るんだぞ。落第の仲間は沢山いるんだ。」
次郎は、先生にはじめて成績のことを言われて、眼を伏せたが、それよりも、三四日こちらに残るといわれたのがいやに気になった。で、そのわけをたずねると、先生は微笑しながら、
「それは、帰ってお父さんに訊いてみると判るよ。」
と言ったきり、べつに委しい説明をしなかった。
彼は、恭一と二人で、急いで家に帰ってみた。