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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
次郎は始終熱心にそれを見ており、自分でも何かと手伝ったりしたが、恭一は、鰻の頭に錐が突きさされるごとに眼をそらした。
午飯は一時近くになった。
大巻の家としては、近来にない賑やかな食卓だった。ご馳走は、鮒の味噌汁のほかは、すべて鉢盛りにしてあり、めいめい好きなものをとって食べるようになっていたが、これは恭一にも、次郎にも、いつもと勝手がちがっていた。しかし、二人は、何か自分たちの経験したことのない、なごやかな空気を、そんなことにも感じるらしかった。
次郎は盛んに鰻に箸をつけ、恭一は鰻よりも蒲鉾の方を多く食った。
食事がすんで小半時もたつと、運平老は次郎に剣道の稽古をつけてやった。恭一にもすすめたが、彼はどうしても面をかぶろうとしなかったので、徹太郎は彼を二階の書斎につれて行って、勝手に本を見さした。
本棚には、少年読物から哲学書まで、かなり広い範囲の本がならべてあった。絵の鑑賞に関する本も二三冊あった。恭一は午前の話を思い出して、先ずそのなかの一冊を引き出してみた。
「恭一君は、やはり絵に趣味があるんだね。」
徹太郎にそう言われて、彼は頭をかいたが、それでも、挿画になっている名画の説明に、いつまでも眼をさらしていた。