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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
そのうちに、彼は、嬉しいとも淋しいともつかぬ、妙な感じに襲われて来た。そして、それからそれへと連想がつづいて、正木のお祖母さんとお墓詣りをしたことから、ついには、亡くなった母の顔までが思い出されて来るのだった。
左側の窓の上の壁には、一間おきぐらいに大きな油絵がかかっていた。それは、すべて、郷土出身の維新当時の偉人の肖像画だった。次郎は、見るともなくそれを見ているうちに、その下に、新入生の父兄たちが、顔をずらりとならべているのに気づいた。次郎は、すばやく、その中に父の顔を見つけた。父も彼を探していたらしく、視線がすぐぶっつかった。次郎は少し顔を赧らゆて、眼をそらし、今度は右の方を見た。
右側の壁には、軍人の写真の額が一尺おきぐらいにかかっていた。次郎は、多分学校出身の戦死者の額だろうと思い、いちいちその下に書いてある名前を見たいと思ったが、自分の位置がずっと左側になっていたので、よく見えなかった。
やがて、型どおりの式が進んで、校長の訓辞がはじまった。
校長は、五分刈で、顎骨の四角な、眼玉の大きい、見るからに魁偉な感じのする、五十四五歳の人だった。