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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

「きのうは、どうだったい、雨天体操場では?」

次郎は大沢には答えないで、恭一の方を見た。そして、

「恭ちゃん、何か聞いた?」

「うむ、きいたよ。もう学校ではみんな知ってるよ。」

「そうか。……だけど、うちじゃ誰もまだ知らんだろう。」

「そりゃあ、知らんだろう。」

「誰にも言わんでおいてくれよ。」

「どうして? いいじゃないか、ちっとも恥ずかしいことなんかないんだもの。」

「父さんだけならいいけど……」

次郎の気持は、恭一にはすぐわかった。

しばらく沈默がつづいたが、大沢はにこにこして、

「学校がいやになりゃしない。」

「そんなこと、ありません。」

次郎は怒ったような調子だった。

「五年生、こわくない?」

「平気です。だって、僕、何も悪いことしてないんだから。」

「僕は五年生に友達がいくらもあるんだが、これからいじめないように頼んでおこうか。」

「馬鹿にしてらあ。――」

と、次郎は大沢をさげすむように見て、

「そんなこと頼むの、卑怯です。」

「だって、うるさいぜ。今年の五年生には、あっさりしないのが、ずいぶんいるんだから。」

「いいです、うるさくたって、卑怯者になるより、よっぽどましです。