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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
巡視は当番制で、ほとんど大ていの先生に割当てられていた。その日の当番は朝倉先生だった。朝倉先生は、尊敬に値すると噂されている先生の一人だったが、一年の教室に出ないので、次郎は、まだ、しみじみとその顔を見たことがなかった。
先生がやって来たのは、次郎が三つボタンに対して最後の罵声をあびせ終って、まだ三十秒とはたたないころだった。
それを最初に見つけたのは、三つボタンだった。それは、先生が次郎のうしろの方からやって来たからである。
先生は、ほんのちょっと、次郎の一間ほどうしろに立ちどまって、二人の様子を見た。それから、默って二人の横に立った。
三つボタンは、もうその時には、すっかりうなだれていた。しかし、次郎はあくまで身構えをくずさなかった。
先生の眼は、すぐ次郎の小刀にとまった。しかし、やはり口をきかない。そして、その眼はすぐ三つボタンの顔にそそがれた。それからおおかた二分近くもたったころ、先生は、だしぬけに草深い地べたにあぐらをかきながら、重いさびのある声で言った。
「まあ二人とも腰をおろしたまえ。」
三つボタンはすぐ腰をおろした。が次郎はまだ身構えたまま、先生を見ていた。