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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

た。

この先生が附添いときまってからは、合宿はみんなにとっていよいよ輝かしいものに思われ、彼らはよるとさわるとその話をして、町に行く日を首をながくして待っていた。

ただひとり楽しめなかったのは次郎だった。彼は、むろん、合宿に加わりたいのが精いっぱいで、町に自分の家があるのがうらめしい気にさえなり、

(先生の方で、みんなを合宿させることにきめてくれるといいが――)

と、心のうちで祈ったりしていた。しかし、権田原先生は、自分が附添いときまった日に、みんなを集めて合宿に必要な諸注意や、費用のことなどを話したあと、次郎の頭をなでながら言った。

「本田は合宿の面倒がなくていいね。だが、試験の時間におくれんように気をつけるんだぞ。いずれ先生が君のうちに寄って、よく打合わせておくが。」

次郎はがっかりした。それでも、彼は、正木のお祖父さんが、「源次は本田にお世話になるより、合宿の方で先生に面倒を見ていただく方が安心じゃ」と言ったのを知っていたので、自分から願いさえすれば、源次と同じにしてもらえそうな気もして、それを言い出す機会をねらっていた。しかしそんな機会はとうとう見つからなかった。