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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
だが、その試験も明日にせまると、恭一は、いかにも心得顔に言った。
「算術の試験には、うんと頭をやすめて置く方がいいんだぜ。だから、きょうは早くねようや。」
で、九時近くになると、二人は床につく用意をはじめた。
二階の勉強部屋が、二人の寝間だった。二人は自分たちの机のまえに、ほとんど重なりあうようにして、床をのべるのだった。恭一はこれまで、自分の家に寝るかぎり、一晩だってお祖母さんと部屋をべつにしたことがなく、いつも俊三と三人で座敷に枕をならべる習慣だったが、今度次郎が帰って来ると、さっそく二人で相談して、勉強の都合を理由に、そんなことにきめたのだった。
むろん、それがお祖母さんに気に入るはずがなかった。お祖母さんにしてみると恭一が自分の遊ぶ時間もないようにして、次郎の勉強の相手になっているのが、だいいち心外にたえなかった。もうそれだけで、恭一がひどく馬鹿をみているように思えたし、それに恭一の親切をいいことにして、あくまでも図にのっている次郎が、小面憎くてならなかった。次郎のため少しでも恭一が犠牲になるなんて、全くあるまじきことだ、というのが、お祖母さんの永い間の信念みたようになっていたのである。