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みんげいよんじゅうねん

民藝四十年

柳 宗悦

柳宗悦『民藝四十年』。同一底本的分册已合并为一书。收入:民芸四十年、改めて民藝について、四十年の回想。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 182,248 字 · 368 页

青空文庫

私は譬えでこの真理をなおも明らかにしましょう。人間が歩むという事は平凡な事柄です。愚なものでさえ上手に歩きます。ですが如何に上手に歩くとも、人はそれを讃美せず、また歩く者もそれを誇りには考えていません。私は民藝をそのような境地に高めたいのです。如何によくとも、平凡な当り前なものと成ってこそ、正しい民藝なのです。あの驚くべき数々の古民藝は、当時平凡極まるものでした。それ故にあの歩行の如く自由に作れたのです。平凡な事にまで高まったからこそ、あのように健全な品物になれたのです。

かりに吾々が足を痛めるとしましょう。または闇夜に灯火もなく歩くとしましょう。歩行はたちまち平凡ではなくなるのです。一歩一歩意識して歩かねばならぬ不自由と困難とを嘗めるでしょう。そうして今まで平凡だった歩けるという事の、異常な幸を今更感じるでしょう。工藝における吾々の現状は丁度それなのです。工藝界が傷を受けたので、今は用心しつつ歩かねばならないのです。歩行は難行です。一々意識して足を進めねばならないからです。民藝が意識の圏内に在る間、仕事に多大の困難が伴うのは必然です。凡てものの発足が、多くの努力や注意や奮闘を必要とするのはその故です。