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すいちゅうのきゅうでん

水中の宮殿

野村 胡堂

「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页

青空文庫

なんという明智、健一も綾子も、今更ながら燿子の逞しい智恵に驚いてしまいました。

「それじゃ行って見よう、牛込の綾子さんの家をもう一度捜したら――」

「駄目よ、お兄様、長州風呂の中に、日本紙を焼いた灰が沢山あったわ。綴目の形まで少し残っているように思ったけれど、刑事さんが信用してくれるかどうか判らないから黙っていたんですもの」

二人はもう一度うならなければならなかったのでした。何処まで気の付く燿子だか判りません。

「で、燿ちゃんは、滝山が爺やさんを殺したと思っているのかえ」と健一。

「そんな事判らないワ。誰かが滝山さんを疑わせるように仕向けているかも知れないじゃありませんか。――唐崎という人だって随分変よ、あの人は爺やさんを邪魔にしていたんだし」

「じゃ、これからどうしたものだろう、燿ちゃん」

水泳では「日本の誇」と言われる大選手ですが、こんな智恵にかけては、健一少年もまるで妹に歯が立ちません。

「なくなった記録は大したものでないし、爺やさんを殺した人もなかなか判りそうもないとしたら、思い切って平泉へ行って見た方がよくはないかしら。ね、お兄様、一週間ばかりお暇はありません?」